制作現場の惨状

こちらから辿れる「大丈夫か人材不足の日本のアニメーション」―PART1――PART2―。海外のアニメーションスタジオで仕事をなさっている梶原さんの、現場からの生の声。


現在の、日本のアニメは海外外注に頼って成立してるのは、ちょっとアニメが好きな人ならば、もはや常識として知っている。ただ、この「外注依存」に対する現場からの声ってのは、あまり見た/聞いた事は無かったので、貴重である。「作画」の人材不足は、見てすぐ分かるので素人でも理解できるが、「制作」の人材不足が日本アニメ全体の質の低下に繋がっている、という視点は、たしかに現場からでないとなかなか想像がつかない。


今から20年くらい前、高校の先輩(アニメ系サークルの)Tさんが某アニメ会社(Sの付くトコロ。大手)に就職して最初に配属されたのが、やはり「制作」。しばらくは音沙汰無かったが、2年程してから『制作進行』に名前がテロップされるようになった。で、2年くらいして「設定制作」に。1年後には「演出」、その2年後くらいには「監督」に抜擢。Tさんの場合、本人の能力が高かったのは間違いないが、それにしてもいわゆる「制作」として縁の下の力持ち状態だったのは、ほんの数年のみ。


アニメの花形である「演出」(文芸方面の。作画方面では「原画」であり「作画監督」)がやれる立場になれば、アニメが好きで業界に入ってきた人ならば、誰も好き好んで「制作」に戻る人はいないだろう。「制作」は、他の仕事をやらせてもらえるようになるための通過点として扱われているように思える。


優れた芸能人をかかえる芸能プロダクションには、優秀なマネージャーが欠かせないのと同じように、優れたアニメ作品を作るには、優秀な「制作」が不可欠なのだろう。制作進行がおマヌケで、必要なカットが滞ってしまったら、そのカットにはアナが空く訳だから。芸能プロダクションが芸能マネージャーの育成を行うように、アニメ製作会社も制作の育成を行わないと、たしかに日本アニメの未来は暗いような気はするけど、これってなかなか難しい問題だよなー。ただでさえ労働力不足してるのに、そんな育成に向ける余剰人員持ってるアニメ製作会社なんぞ、おそらく無いんじゃないのかね?